光学コーティング

反射防止膜(ARコーティング)

反射防止膜(ARコーティング)は最も一般的な光学コーティング技術です。どのように機能するのか、なぜALDが反射防止膜を製造するための新しいな技術としてふさわしいのか説明します。

反射防止膜は、一般的な光学コーティングのカテゴリーに含まれます。反射防止膜やARCとも呼ばれ、眼鏡のように我々の身近にある製品から、自動運転などを可能にするLiDAR(ライダー)や宇宙望遠鏡のような高度に技術的な装置にまで幅広く利用されています。

その名前にもある通り、反射防止膜はコーティングされた基材の表面相互作用によって反射を最小限に抑えます。

通常、鏡は光を反射しますが、反射防止膜は鏡とは反対の動作をし、処置をされた表面を通してできるだけ多くの光を通します。

光が表面と相互に作用するとき、光の一部は透過し、一部は反射します。この反射は、光が通過する2つの媒介物の屈折率が異なる結果起こります。

空気とガラスの屈折率はそれぞれ1.00~1.50です。この結果、光の約4%が反射されます。

屈折率の差が大きければ大きいほど、反射される光の量は多くなります。

屈折率の差が大きいほど、反射される光の量は多くなる

反射防止膜の目的は、光の反射量を最小限に抑えながら、光の透過量を最大化することです。

反射防止膜を作る最も簡単な方法は、元の2つの屈折率の積の平方根に等しい屈折率を持つ素材を使うことです。

上記の例では、屈折率1.22の素材が最適ということになります。これで、各界面で反射する光はわずか1%になり、全体で反射する光は2%になります。素材が加わるだけで、反射光の量は半分になります。

反射防止の特性をさらに高めるために、薄膜干渉を使用することもあります。この反射防止膜は、光の波がどのように干渉するかを利用しています。最も一般的な薄膜干渉は、単層誘電体膜の厚さが光波長の4分の1になるように調整されるもので、1/4波長層として知られています。

例えば、入射光の波長が400nmで、ARC材料がSiO2(n=1.45)の場合、反射防止膜の厚さは69nmとなります。

そのようにすることで、コーティングと基材の界面で反射する光は、入射光と180度位相がずれます。この2つの波は破壊的に干渉し合い、表面での反射をなくします。

1/4波長層の動作の一例です。それぞれの面(R1とR2)からの反射光は180度位相がずれているため、破壊的な干渉が生じます。

これまでのところ、反射防止膜は単一波長に対してのみ機能しています。さらに広帯域にコーティングを施すために、多層コーティングが使用されることもあります。

例えば、低指数素材と基板の間に高指数素材を挟んで、さらに優れた反射面を作ることもできます。

通常、反射防止膜は低指数と高指数の素材を交互に複数層重ねたものです。素材とその厚みを変えることで、1つの波長だけでなく、広い波長範囲にわたって反射防止性能を向上させることができます。

では、ALD(原子層堆積法)で反射防止膜を施すのはなぜでしょうか?最も重要な理由として、以下が挙げられます。

精度: 反射防止膜を製造する際、正しい厚みを蒸着することが非常に重要です。素材の厚みのわずかな違いは不完全な破壊を引き起こしたり、場合によっては強め合いの干渉を引き起こしたりして、薄膜干渉の性能を損なう可能性があります。ALDは一度に1オングストロームずつ材料を成長させるため、ナノメートルの分解能で厚みをコントロールすることができます。

調整可能性: 素材の特性はALDで高度に調整が可能です。温度やプラズマパワーなどの蒸着パラメーターを微調整することで、屈折率や消衰係数などの特性を調節することができます。人工材料やドーピングを使えば、さらなるチューニングが可能です。これにより、得られる反射防止膜の反射極小値や帯域幅を高度にコントロールできます。

純度: ALDで作られたフィルムは不純物の割合が非常に低いです。このため、吸収や体積散乱はごくわずかです。

整合性: 光学部品の形状がより小さく複雑になるにつれ、表面全体にわたって一貫した特性が必要不可欠になります。等方性ALDプロセスでは、マイクロスケールからマクロスケールに至るまで、複雑な形状に完璧な成膜を施します。これは、非球面レンズや導波路のように、PVD(物理気相成長)では均一な膜を提供することが困難な場面において非常に有益です。

 

革新的なBeneq AtomGrass™の広帯域反射防止膜は、380~1000 nmの範囲において平均反射率が0.07%未満で、入射角50度まで安定した性能を発揮します。

これは、低反射率、広帯域、広角性能というARコーティングに必要なすべての利点を組み込んだ、世界初のコーティングです。カメラレンズ用コーティングの詳細については、こちらをご覧ください。

Beneq AtomGrass™の広帯域反射防止コーティングと従来の反射防止膜との比較図。Beneqのソリューションは、平均反射の極小値と帯域幅で従来のコーティングに勝るだけでなく、入射角の大きさでもはるかに優れた性能を発揮します。

 

BeneqのALDソリューションと装置については、光学コーティングのページをご覧ください。

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