ALD(原子層堆積法)

薄膜堆積法について

薄膜は、鏡のような日常的なものから最先端の電子機器に至るまで、あらゆるところで使われています。薄膜を形成する方法はいくつかあります。ここでは、薄膜形成技術とその種類についてご紹介します。

Thin film deposition, coating services

薄膜形成とは?

薄膜形成とは、数ナノメートルから約100マイクロメートルの範囲の基板上に材料を構築するプロセスです。薄膜形成にはいくつかの方法があり、それぞれの技術には、蒸着源の気化方法、蒸着速度、利用可能な材料や、得られる膜の特性などの異なる特徴があります。

薄膜形成は大きく分けて、化学的手法と物理的手法に分類できます。化学的手法では原料ガスの表面での化学反応によって材料を堆積させるのに対し、物理的手法では金属やセラミックの蒸着に使われます。化学気相成長法(CVD)は、最も一般的に用いられる化学的方法のひとつで、ガス状のプリサーカ(前駆体)が反応または分解をすることで膜を蒸着します。物理的方法は、一般的に物理的気相成長法(PVD)と呼ばれており、PVDの技術は真空中で物質を蒸発させる蒸着と、粒子を一定の並びに堆積させて薄膜形成をするスパッタリングに分けられることが多いです。

さまざまな種類の薄膜形成法。ALD(原子層堆積法)は化学気相成長法(CVD)の一種です。

ALD(原子層堆積法) vs CVD(化学気相成長法)

ALD(原子層堆積法)は高精度のCVD法の一種です。どちらも化学反応を利用して薄膜を堆積させますが、ALDはフラックス(金属表面処理を行い接合を容易にするもの)ではなく、表面反応をうまく利用します。個々の反応を分離することで、膜厚、密度、形状をより高度に制御することができます。このため、ALDは非常に薄い膜(10~50 nm)や高アスペクト比構造(> 10:1)の成膜に適した方法です。CVDは逆に、厚い膜を高い蒸着速度で成膜するのに適しています。また、分解が有効な経路であるため、利用可能なプリサーカ(前駆体)の範囲がはるかに広いのもCVDの特徴です。

ALD(原子層堆積法) vs PVD(物理的気相成長法)

スパッタリングのようなPVD法は、ALDや他のCVDプロセスとは全く異なるプロセスを踏みます。例えばスパッタリングでは、高度なエネルギーをターゲットとなる材料に衝突させ、粒子を基板への経路上に送り、その表面に付着させることで粒子を一定の並びに堆積させます。ここでの主な違いは、蒸着が「一定の並び」であること、つまり平らな表面状態であれば均一な成膜が可能ということです(凹凸のあるものには向かない)。対してALDは等方性プロセスなので、表面状態に左右されず、すべての表面が均等にコーティングされます。PVDは、特に高蒸着速度や平らな基板形状での成膜に適しているため、低温プロセスや合金蒸着で使われることが多いです。

以下は、ALD(原子層堆積法)、CVD(化学気相成長法)、PVD(物理的気相成長法)をざっくりと比較したものです。


薄膜形成方法の比較

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