光学コーティング

自動車用カメラレンズ用コーティング

自律走行車(AV)にとって、安全性は最も重要です。より多くのOEMが自動運転など自律性の高い車両を導入するにつれ、車両に付随するセンサーの誤作動は減ってきています。カメラを使用する自律走行車にとって、レンズフレアはアーチファクト(画像内に映し出される散乱線やノイズ)やゴースト画像の原因となることが多く、一歩間違えれば大惨事につながる可能性もあります。ALD(原子層堆積法)で製造された屈折率傾斜反射防止膜が、どのようにレンズフレアを低減し、自律走行車の車載カメラモジュールの安全性を向上させるかについてご説明します。

何十年もの間、人類は自動車が自動運転する未来を想像してきました。これが実現できれば、映画を観ながらスナックをつまむなどして移動中にくつろいだり、車通勤の場合は通勤時間を利用して仕事をしたりと、新しい方法でモビリティを体験することができます。現にテスラ社を筆頭に、複数の自動車メーカーが自律走行機能を搭載し始めており、その実現に近づきつつあります。マッキンゼー・アンド・カンパニーは最近の報告書で、自律走行は2035年までに4000億ドル規模の産業になるとも推定しています。

自動運転を実現するため、OEMは車両に新しい検知器を搭載し、周囲の環境を「見て」、効率的かつ安全に反応できるように設計を進めています。そのため、標準的なカメラからレーダー、LiDARなどより高度な技術にまで、さまざまなセンサーが導入されています。これらは、アクセルとブレーキの操作を自動的に行うアダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)や走行中に車線を逸脱を防ぐレーンアシストのような基本的な自動車機能にはすでに搭載されています。

自律走行車におけるセンサーとその用途の概要(出典: EETimes)

次世代の自律走行車(AV)が市場に出回り始める中、安全性は最も重要な課題です。OEMは、自社の車両が常にエラーなく安全に作動することを示すため、厳しい要件を設定しています。安全性の追求において、車の “頭脳 “に情報を供給するセンサーや検出器の誤作動は許されないため、精密な製造技術が必要となります。

カメラは、自動車で最も広く使われているセンサーのひとつです。

LiDARと並んで、自律走行車は周囲を画像化し、その情報を車両のコンピューターに取り込むための最良の技術であるかどうかをめぐって、激しい論争が繰り広げられています。

テスラ社のように、自律走行車における画像センサーとしてカメラだけを使用している企業もあります。カメラ技術を支持する企業や人々は、視覚情報を処理するためのニューラルネットワーク(人間の脳内の学習メカニズムを模倣した機械学習手法)に接続されたカメラが、人間が運転中に見ているものを再現する最も良い方法だと考えています。

この議論における意見がどうであれ、カメラには自律走行に向いている特性がいくつかあります。第一に、天候に左右されず確実に作動することができます。カメラは自ら光を発するのではなく、外の世界からの光を受け取る仕組みのため、雨や雪などの悪天候でも人間が見ることができるものなら同じように認識することができます。

第二に、カメラは比較的安価です。カメラ技術は過去10年間で急速に進歩し、LiDARのような代替技術の数分の一の価格で高品質の画像技術を実現しました。複数のLiDARモジュールを統合するのに比べれば、8~10台のカメラで車をカバーするコストは些細なものです。

しかしながら、OEMはデバイスにおいて常に最高のパフォーマンスを追い求めており、彼らにとってカメラ技術を利用することの大きなデメリットの1つは、いわゆる「エッジケース」です。

エッジケースとは、稀にカメラの検出システムにエラーを引き起こす可能性のある事象のことで、ニューラルネットワークを騙して、何か物体がそこにあるのにないと思わせたり、ある物体を別の物体と勘違いさせたりすることがあります。このようなケースは稀であるものの、実際に起これば大惨事につながる可能性があることは想像に難くないでしょう。

カメラシステムのエッジケースの主な原因のひとつにレンズフレアがあります。レンズフレアは、レンズ内の光がレンズシステム内で散乱または反射し、画像にアーチファクト(散乱線やノイズ)やゴースト像が生じることで発生します。これは主に 、明るい場所などでスマートフォンで写真を撮ろうとしたときに起こることが多いです。自律走行車においては、このアーチファクトを他の車と間違うことがあり、それを避けるために一方向にハンドルを切ることがあります。

HDR(ハイダイナミックレンジ)機能を搭載したカメラ(a)と非搭載のカメラ(b)におけるレンズフレアの例。画像内のフレアは、実在しない物体と間違えたりすることがある。(出典: https://doi.org/10.1016/j.iatssr.2019.11.005)

レンズのフレアやゴースト画像を防ぐために、反射防止膜(ARC)がよく使われます。反射防止膜は基本的に、一連の破壊的干渉を通してシステム内で反射する光の量を最小限に抑え、画像内のアーチファクトの発生を低減します。

しかしながら、これがALD(原子層堆積法)とどのような関係があるのでしょうか。

レンズのフレアを最小限に抑えることは、エッジケースの発生を防ぎ、事故リスクを低減するために非常に重要です。レンズに効果的なコーティングを施すことができれば、エッジケースの発生は少なくなるか、全く無くなることも考えられるでしょう。

Beneqではスマートフォンカメラのフレアを低減するために、ALDを使用してレンズに反射防止膜を成膜することを推奨します。ALDコーティングの反射防止特性は非常に優れたものですが、特に非球面レンズなどの形状においてALDの優れたステップカバレッジ(段差被覆性)をカメラレンズコーティングに施すものとして最適です。

非球面レンズの画質を向上させる反射防止膜の例。(出典:https://www.mi.com/global/product/xiaomi-12s-ultra)

カメラシステムのレンズフレアを限りなく無くすためには、反射防止膜はレンズ上全面的に均一でなければなりません。ALDプロセスなら、全ての表面に同量の材料を100%付着させることができます。

Beneqは、OEMがカメラシステムから最高の性能を引き出すことができるよう、革新的な屈折率傾斜反射防止膜ソリューション、Beneq AtomGrass™を開発しました。

この新しいソリューションは、380~1050nmの範囲における平均反射率が0.1%未満で、入射角50度まで一貫した性能を持つ、屈折率傾斜、広角、広帯域反射防止コーティングです。

Beneq AtomGrass™を塗布したカメラレンズの上部と下部の反射率測定
Beneq AtomGrass™の可視域(λ=400-700 nm)における広角反射防止性能

静止した非球面レンズは常に高い入射角で光が相互作用するため、この広角性能は車載カメラにとって特に重要である。

Beneq C2Rでは、反射防止膜を極めて短時間で製造できます。例えば、AtomGrass™コーティングは1枚10分以内で成膜できます。

自律走行車のカメラはALDと深い関連があります。より多くの自動車メーカーが自動運転領域に参入する中、勝ち残るのは、消費者が安全面で最も信頼できると感じるメーカーになるでしょう。

ALDは車載カメラのレンズフレアを低減する際に最適なソリューションであり、エッジケースによる事故のリスクを低減します。BeneqのAtomGrass™を使用することで、カメラの性能が向上し、自律走行車の可能性がより広がります。

 

Beneqの反射防止膜ソリューションがお客様の製品をどのように改善できるかについて、こちらからお問い合わせください

 

More information about Beneq’s ALD solutions and equipment can be found on the Optical Coatings page!

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